ビジネスにおける意思決定で、客観的なデータに基づいた判断ができていますか?「感覚や経験も大事だけど、やはり数値的な根拠が欲しい」「市場全体の傾向を把握したい」と感じる場面は多いのではないでしょうか。そんな時に強力な武器となるのが
定量調査です。
定量調査は、数値データを用いて市場や消費者の実態を客観的に把握するためのリサーチ手法です。しかし、「具体的にどんな種類があるの?」「どうやって進めればいいの?」「集めたデータをどう分析すれば?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、定量調査の基本から、代表的な手法であるアンケート調査(特にオンライン調査)を中心に、調査の種類、設計のポイント、データ分析、レポーティングまで、一連の流れを網羅的に解説します。また、定量調査の初心者の方でも理解しやすいよう、実践的なポイントも交えてご紹介します。この記事を読めば、定量調査の全体像を理解し、効果的に活用するための第一歩を踏み出せるはずです。では参りましょう!
定量調査とは?基本的な概念を理解しよう
定量調査とは、調査対象者の意見や行動を
数値データとして収集し、さらに統計的な分析を行うことで、
集団全体の傾向や構造を把握することを目的とした調査手法です
^1。「はい/いいえ」で答えられる質問や、選択肢から選ぶ質問、5段階評価のような質問を通じてデータを集め、「〇〇と回答した人は全体の△%」「商品Aの満足度は平均□点」といった形で結果を数値化します。
定性調査との違いを明確にする
定量調査としばしば対比されるのが
定性調査です。一方で、定性調査は、数値化できない「言葉」や「行動」のデータを収集し、その背景にある理由や深層心理を探ることを目的とします(例:インタビュー、行動観察)。
比較項目 |
定量調査 |
定性調査 |
目的 |
集団全体の傾向・構造の把握、仮説検証 |
背景・理由の深掘り、仮説発見、アイデア探索 |
データ形式 |
数値データ(割合、平均値など) |
言葉、行動、観察記録など |
分析方法 |
統計分析 |
内容解釈、意味付け |
サンプル数 |
多い(数百~数千) |
少ない(数名~数十名) |
代表的な手法 |
アンケート調査、会場調査、実験 |
デプスインタビュー、グループインタビュー |
定量調査は「
実態を量的に把握する」、定性調査は「
理由や背景を質的に深掘りする」と考えると分かりやすいでしょう。また、両者は補完関係にあり、目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりすることが重要です。
定量調査の主な種類と特徴
定量調査には様々な手法がありますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
1. アンケート調査(最も一般的な定量調査手法)
最も広く用いられる定量調査の手法です。あらかじめ用意した質問票に回答してもらうことで、意見や実態に関するデータを収集します。実施方法によって、さらにいくつかの種類に分けられます。
- オンライン調査(ネットリサーチ):
インターネットを通じてアンケートを実施する方法。スピード、コスト、広範囲へのアプローチに優れており、近年主流となっています。ただし、回答者の偏りや回答の質には注意が必要です。
- 郵送調査: 調査票を郵送し、回答後に返送してもらう方法。インターネットを利用しない層にもアプローチできますが、時間とコストがかかり、回収率が低い傾向があります。
- 電話調査: 調査員が電話で質問し、回答を聞き取る方法。比較的短時間で実施できますが、人件費がかかり、込み入った質問には向きません。
- 訪問調査: 調査員が対象者の自宅や指定場所を訪問し、対面で質問・回答してもらう方法。丁寧な説明が可能ですが、コストと時間が最もかかります。
2. 会場調査(CLT)とホームユーステスト(HUT)
製品テストでよく用いられる定量調査の手法です。
- 会場調査 (Central Location Test: CLT):
指定した会場に対象者を集め、製品を試用・評価してもらう方法。環境を統制しやすく、機密性の高い調査や五感評価に適しています。
- ホームユーステスト (Home Use Test: HUT):
対象者の自宅などに製品を送付し、一定期間試用後に評価を回収する方法。実際の使用環境に近いリアルな評価が得られます。オンライン製品テストもこの一種です。
3. その他の定量調査手法
- 実験: 特定の条件(例:広告の種類、価格設定)を変えた場合に、対象者の反応(例:購入意向、ブランドイメージ)がどう変化するかを測定する手法。因果関係の検証に適しています。
- 観察調査: 対象者の行動(例:店舗での購買行動、ウェブサイト上の行動)を観察し、データを収集する手法。無意識の行動や言語化しにくい実態を捉えるのに有効です。
定量調査の進め方(プロセス)
効果的な定量調査を実施するためには、計画的にステップを踏むことが重要です。
1. 調査企画・設計
調査の成否を左右する最も重要なフェーズです。
- 調査目的・仮説設定: 「何を知りたいのか」「どのような仮説を検証したいのか」を具体的に定義します。目的が明確であればあるほど、後のステップがスムーズに進みます。
- 調査対象者の設定: 誰を対象に調査するのか(年齢、性別、居住地、利用経験など)を明確にします。
- サンプリング: 母集団からどのように調査対象者(サンプル)を選ぶかを決定します。調査結果の信頼性を担保するため、偏りのない適切なサンプリング方法とサンプルサイズを設定することが不可欠です。
- 調査票作成: 目的達成に必要な質問項目を、分かりやすく、回答しやすい形式で作成します。質問の順序や言葉遣いにも注意が必要です。
2. 調査実施
設計した調査票を用いて、対象者からデータを収集します。オンライン調査の場合は、アンケートツールや調査会社のパネルを利用して配信・回収します。また、実施期間中の進捗管理も重要です。
3. データ集計・分析
収集したデータを整理し、意味のある情報を引き出すフェーズです。
- データクリーニング: 回答漏れや矛盾のある回答、不誠実な回答などをチェックし、必要に応じて除外・修正します。
- 集計: 単純集計(各質問の回答割合)やクロス集計(属性別の回答傾向)などを行い、データ全体の傾向を把握します。
- 分析: 平均値や標準偏差などの基本統計量の算出、グラフ化による可視化、必要に応じて統計的検定(有意差検定など)を行い、データからインサイトを導き出します。
4. レポーティング
分析結果を分かりやすくまとめ、調査報告書を作成します。調査目的への回答、得られたインサイト、今後のアクションへの示唆などを盛り込みます。さらに、グラフや図を効果的に用い、結論が明確に伝わるように構成することが重要です。
定量調査を成功させるポイント
定量調査から価値あるインサイトを得るためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
- 目的の明確化: 常に「何のために調査するのか」を意識し、調査設計から分析まで一貫性を持たせる。
- 適切な手法の選択: 調査目的に合った調査手法(オンライン、CLTなど)を選ぶ。
- 質の高い調査票: 分かりやすく、バイアスのない質問設計を心がける。
- 代表性のあるサンプル: 偏りの少ないサンプリングと、適切なサンプルサイズを確保する。
- 丁寧なデータ処理: データクリーニングや集計・分析を正確に行う。
- 客観的な解釈: 分析結果を客観的に解釈し、飛躍した結論を出さない。
これらのプロセスは専門的な知識や経験を要する場合も少なくありません。「調査はしたいけど、何から手をつければいいか分からない」「分析やレポーティングに自信がない」という方もいらっしゃるでしょう。
Minediaのソリューション:リサーチをもっと身近に、もっと深く

Minediaでは、お客様のリサーチ活動を強力にサポートする様々なソリューションを提供しています。定量調査の設計から実施、集計、分析、レポーティングまで、専門知識を持つリサーチャーが
伴走型でサポートします。「調査の目的はあるけれど、具体的な進め方が分からない」といった段階からでも、お気軽にご相談ください。お客様の課題に合わせて最適なリサーチプランをご提案します。また、定量調査だけでは見えにくい「なぜ?」を探るために、
AIを活用した定性調査ソリューションも提供しています。
- AI Driven 調査ソリューション:
オンラインインタビューシステムとAIによる自動文字起こし・サマリーレポート生成機能を組み合わせ、定性調査の実施から分析、共有までを効率化します。定量調査で得られた仮説を、インタビューでスピーディーに深掘りすることが可能です。
- AIペルソナ:
既存の調査データなどからAIが消費者ペルソナを自動生成。そのペルソナにチャット形式でインタビューすることで、リクルーティングの手間なく、手軽に消費者のインサイトを探ることができます。
これらのソリューションを活用することで、定量調査と定性調査を効果的に組み合わせ、より深く、多角的な顧客理解を実現できます。調査の企画から分析、そして次のアクションへ繋げるまで、
Minediaのリサーチサービスにまるっとお任せください。
まとめ
定量調査は、ビジネスにおける意思決定の精度を高めるための強力なツールです。その基本となる考え方、種類、進め方、そして分析のポイントを理解することで、より効果的に活用することができます。
- 定量調査とは: 数値データで集団の傾向を把握する手法。
- 主な種類: アンケート調査(オンラインが主流)、CLT/HUTなど。
- 進め方: 目的設定→設計(サンプリング、調査票)→実施→集計・分析→レポーティング。
- 成功の鍵: 明確な目的、質の高い設計、代表性のあるサンプル、丁寧なデータ処理、客観的な解釈。
本記事で紹介した内容が、みなさまの定量調査活用のヒントとなれば幸いです。もし、定量調査の実施やデータ活用についてお困りのことがあれば、ぜひ
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参考文献
[1].
定量調査の特徴と手法:定性調査との違いや使い分けも徹底解説|ネオマーケティング